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メモ程度のことを気が向いたときに

過去作掘り出し② プリズム

プリズム

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『プリズム』
プリズム【prism】=(柱の意)光の屈折、分散などを起こさせるに用いるガラスなどの三角柱。また、望遠鏡などで、光線の方向を変えるために種々な形の面をもつガラスなどの透明立体。
 
 
「プリズムが来たぞー!早く逃げろー!」
 ・
 ・
僕はプリズム。
みんなの嫌われ者。
みんなに迷惑をかけようなんてコレっぽっちも思っていないのに、
僕がいること自体がみんなに迷惑をかけてるみたい。
人間だけじゃなく、犬も鳥も虫だって、僕を見るとあわてて逃げるんだ。
 
だから僕は洞窟に一人で住んでるの。
この洞窟を見つけて初めて中に入ったとき、
コウモリも怯えて洞窟のおくへ姿を隠したよ。
 
そうそう、プリズムって名前は人間につけてもらったんだ。
今まで何度か街へおりて行ったときにね、
人間が、プリズムが来たぞー!って叫ぶの。
それで自分の名前はプリズムなんだ、って。
ウフフ、でもこの名前けっこう気にいってるんだ。
 
最初はね、人間達が逃げる理由が全然分からなかったけど、
いつだったか、なんとなく分かって。
それで洞窟に住むようになったの。
 
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洞窟に住んでいるとね、
時々、迷い込んでくる動物がいてね。
野うさぎだったり、イタチだったり、キリギリスだったり。
 
そうそう、洞窟に住むようになってからすぐにね、
野うさぎがキツネに追いかけられてこの洞窟に逃げ込んできて、僕とはちあわせしちゃってさ。
キツネは僕を見てあわてて逃げ出しちゃったんだけど、野うさぎは僕を見てひっくり返って失神しちゃって。
ウフフ、あの野うさぎのひっくり返りようはおかしかったなぁ。
 
 
でも、少し悲しかったよ。
その野うさぎは天敵のキツネよりも怖いものを見たから失神しちゃったんだって考えるとね、少し悲しかったよ。
 
それからはね、
雨が降ると僕は洞窟の奥にある岩のくぼみに隠れるようにしてるんだ。
色んな動物が洞窟に入ってくるからね。
野うさぎだったり、イタチだったり、キリギリスだったり。
その子たちが雨やどり出来なくて濡れそぼっちゃかわいそうだろ。
 
 
洞窟の奥でジッとしているのは退屈なんだけど、
そんなときは雨がやむまでショパロのことを考えているよ。
 
ショパロのことを考えるとね、すごく楽しい気分になれるんだ。
 
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ショパロってのはね、人間の子供だよ。
僕に出来た初めての友達なんだ。
 
ショパロは僕を見てもちっとも怖がらなかった。
目が見えなかったからね。
 
ショパロとの出会いはね、そう、神様に紹介してもらったんだ、ウフフ。
 
ある時、洞窟に迷いこんだ人がいて、その人は僕を見ても何故か逃げださなかった。それが神様さ。
 
 
その人は、ナイスガイ略してナガイさんって方で普段はしがないサラリーマン
 

 

 

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『プリズム-2』
プリズム【prism】=(柱の意)光の屈折、分散などを起こさせるに用いるガラスなどの三角柱。また、望遠鏡などで、光線の方向を変えるために種々な形の面をもつガラスなどの透明立体。
 
 
「プリズムが来たぞー!早く逃げろー!」
 ・
 ・
僕はプリズム。
みんなの嫌われ者。
みんなに迷惑をかけようなんてコレっぽっちも思っていないのに、
僕がいること自体がみんなに迷惑をかけてるみたい。
人間だけじゃなく、犬も鳥も虫だって、僕を見るとあわてて逃げるんだ。
 
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僕はね、ショパロにはこの世界の素晴らしさをいっぱい語ったよ。
可愛い鳥や、綺麗な草花をね、目の見えないショパロにも出来るだけ分かるように分かるように説明したんだ。ショパロは喜んでくれたよ、すっごく。
ショパロはね、人間の優しさを語ってくれたよ。
優しいおじいさんの話や、いつもスープを分けてくれるおばさんの話。森で迷ったショパロを抱いて町まで連れて帰ってくれた猟師さんの話。
だからね、僕は知ってるんだ。
僕を見ると逃げたり怒ったりする人間は本当は優しい生き物なんだって。
 
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そんな風に窪みの中でショパロの事を思い出してるとね、知らない内に雨も止んで、動物達は洞窟の外へ出てっちゃうからね。
だからね、ジッとしてるのも全然退屈じゃないんだ。
そうそう、ショパロはね、今はもういないよ。死んじゃったから。
 
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ある日、洞窟に遊びに来たショパロが言ったんだ。
「もしかするとボクの目が治るかもしれないんだ!」
って。ショパロはすごく興奮してたよ。
その話を聞いた時、なんだか急にお腹がゴロゴロ痛くなってきて頭の中がグルグルしだしてさ、あれって何だったんだろう。今でも分からないや。
ただね、気が付くと僕はショパロを殺してたんだ。
 
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ショパロのお墓はね、洞窟の傍に建ててあげたよ。
今でもね、ショパロを殺した時のことを思い出そうとするとお腹が痛くなるんだ。
だからね、楽しい思い出しか思い出さないようにしてるんだ。
 
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